1月も過ぎ、インターネット専業証券(ネット証券)大手5社の昨年4−12月期の業績が出揃いました。
ネット証券大手5社(SBIイー・トレード証券、松井証券、マネックス・ビーンズ・ホールディングス、カブドットコム
証券、楽天証券ホールディングス)のうち、松井証券を除く4社は、個人の株式売買が低迷していることから
株式売買手数料収入を減らしています。ただ(一般企業の売上高に該当する)営業収益や純利益をみると、
5社のうち3社は増収増益を確保しています。主に投資信託の関連収入が、株式売買手数料の減少分を
カバーしたためです。同じ構図は店舗を持つ対面型のFX証券会社でもみられます。岡三ホールディングスや
東海東京証券など準大手・中堅といわれるFX証券会社は、純利益が前の年に比べ2割から8割程度
増えています。野村ホールディングスが純利益を4割近く減らしていることと対照的です。準大手・中堅の
FX証券会社が増益を確保できたのも、ネット証券と同じく、投資信託関連の収入が拡大しためです。
株式売買手数料は、株式の取引高と連動する傾向が強く、個人投資家の動きが活発になれば手数料収入の
拡大が見込まれますが、逆に動きが鈍くなると手数料収入が減少します。言い換えれば、株式売買
手数料は、株式取引のブームに拠るところも大きく、安定的な収益源になりにくいものといえます。一方、
投資信託の場合、証券会社が販売すると、販売手数料とは別に信託報酬の一部を得ることができるため、
投資信託の残高に応じてある程度の収入が見込める、つまり安定的に収入を得ることができます。
ネット証券大手5社の損益状況に違いが出たのも、投資信託販売の結果の違いが反映された結果とも
考えられます。ただ個人的には、FX証券会社が投資信託の販売を強化したとしても、収入の安定化は、
さほど長続きしない気がしています。証券会社にとってメリットである信託報酬が、競争によって低下する
可能性があるからです。
今から数年前くらいまで、投資信託の販売手数料は、投資金額の3%程度であるのが一般的でした。
販売手数料は、基本的に全額、販売者であるFX証券会社の収入となったので、証券会社は投資信託の
販売を強化していました。しかし、多くの証券会社で投資信託の販売を強化した結果、競争が激しくなり、
投資信託の販売手数料は低下傾向を続けるようになりました。今では、販売手数料がゼロであるノーロードと
呼ばれる投資信託も増えており、販売手数料が高い投資信託は、以前に比べて売れ行きが鈍る傾向に
あります。販売手数料がゼロになってしまうと、証券会社にとって収益源となるのは信託報酬のみとなります。
信託報酬とは、運用に必要なコストなどを投資家に支払ってもらうものです。一般に信託報酬は、運用を
担当する委託会社、資金を預かる信託銀行、そして投資信託を販売する証券会社の3者で分けられます。
じつは最近では、販売手数料が低下したように信託報酬でも低下する兆しが出ています。信託報酬は
投資信託の運用方針によって異なりますが、機械的な運用とされるインデックス運用の場合、信託報酬は
以前は1〜1.5%くらいでしたが、現在では0.6%くらいまで低下しています。信託報酬の低下ペースがどこまで
加速するかは分かりませんが、証券会社の多くが投資信託の販売を強化するようだと、投資信託の販売は、
証券会社にとって強化すべきでないビジネスになるのかもしれません。何事においても皮肉な現象という
ものは存在するようです。